戦争犯罪の責任を問う(2) [中東]
ラジ・スラーニ講演 広島大学 2014年10月15日
質疑応答
問:日本の平和憲法を改正しようという動きや、武器輸出三原則をやめたことなどをどう思うか。
答:私は日本の政策の専門家ではありませんが、それに関しては二つあります。私は少し混乱しています。よく分からないでいる。困惑しているのです。
先ずソニーです。パレスチナが敵だと言うのでしょうか?ソニーのテレビ、ラジオ、カメラ、私は大好きです。しかし、ガザを攻撃したミサイルからソニー製品が見つかったと言うのです。
日本のイメージは素晴らしいです。パレスチナ人にとって、あるいは全てのアラブ人にとってもそうです。スウェーデンやフランスもそうですが、非常にイメージがいい。日本人は、真面目で勤勉で誠実で頭がいい、というイメージです。ところが青天の霹靂でした。ソニーの製品(がイスラエルのミサイルの破片から見つかったと言うの)です。
二つ目は今年5月、日本の首相とイスラエルのネタニヤフ首相が包括的な提携協定に調印したことです。安全保障などで協力するのだそうです。
日本がイスラエルから拘束者の拷問の仕方を学ぼうというのでしょうか?超法規的殺人のやり方を学ぼうというのでしょうか?発電所とか下水処理施設の爆撃の仕方を学ぼうというのでしょうか?無人機で市民を標的にすることを学ぼうというのでしょうか?
私は混乱しています。よく分からない。日本がイスラエル軍の戦争犯罪を学ぼうというのですか?日本には道徳的権威があります。日本は文明国です。それは技術が進んでいるという意味ではなくて、道徳の面でそうだと言いたいのです。日本は世界に対してそのような貢献をしてほしいと思います。私は日本にイスラエルと協力してほしくはありません。世界の市民として私はそう願うのです。
日本には文明国として、人権で、民主主義で、法の支配で、平和で、貢献してほしいと思います。ですから最近の展開はショックです。憲法9条もとても大切です。それを改正しようという動きもあるというのですから、ショックです。
問:弁護士資格、弁護士団体、パレスチナにあるのか。
答:(要約)イスラエルの法廷で弁護する資格はない。資料をそろえそれを提出し、あとはイスラエルの人権弁護士の仕事。イスラエルの人たちとの間にある素晴らしい協力の分野。かつては直接会えたが、今は電話、メイル、ファックスのみ。
自分はベイルート、アレキサンドリア、そしてアメリカのコロンビア大学で学び、これまで37年間弁護士をやってきた。自分はイスラエルの法律も熟知し、ヘブライ語も得意だが、イスラエルの法廷で弁護人を勤めることは許されない。そもそもイスラエルに行くことが許されない。イスラエルはおろか西岸地区にも行けない。パレスチナの99パーセントの人が、西岸地区には行けない。
パレスチナの弁護士団体は西岸地区とガザ地区の統一団体だが、お互いの行き来はできない。自分はアメリカ最高の人権賞(訳注:さらには「もう一つのノーベル平和賞」と言われるライト・ライブリーフッド賞)の受賞者だが、イスラエルからは「テロリスト」と分類されている。国際法を悪用して「文明的な」イスラエルに逆らう、テロの手先、という位置づけだ。
問:欧米の価値観とイスラムの価値観。折り合えないものなのか。
答:(要約)基本的な価値観、根本的な価値観というものは、特定の宗教や哲学のものというより、人間の価値観として普遍的であり、共通している。人を殺してはいけない、盗んではいけない、姦通してはいけない。そういった価値観は、宗教や哲学の別を超え、人間の価値観だ。私たちはみな同じ人間なのだ。命とか尊厳といった価値をみな共有している。
私がひどく驚くのは、イスラム教徒と名乗る人たちから、そこから逸脱する考え方をする人たちがいること。
祖父も言っていた。聖なるパレスチナの地、この狭い土地に神が世界の三大宗教を作ったのは、人がお互いに対し寛容になり、他者を受け入れ、共存するためだ、と。私たちは殺戮や差別はしなかった。ユダヤ人がヨーロッパの迫害を逃れてやって来た時、私たちは暖かく受け入れた。ユダヤ人を殺したのはヨーロッパ人だ!私たちアラブ人、パレスチナ人ではない!しかし犠牲者であるユダヤ人が、こんどは私たちを犠牲者にした。彼らがいま私たちを占領している。強大な軍隊を持つ彼らが。核兵器まで持つ彼らが。ところが「我々犠牲者が、イスラエルを犠牲にしている、だからイスラエルが守られなくてはならない」と言う。これは「カフカ」(不条理)だ!彼らこそ毎日のように戦争犯罪を犯しているのに、私たちがテロリストと呼ばれる!…
イスラムの価値というが、ISISやイスラムを生み出したのはイスラエルやアメリカだ!ビンラディンにしてもそうだ!
アメリカもイスラエルも、そういうものがどうしても必要なのだ!冷戦が終わって新しい敵が必要。イスラム国がそのような格好の敵だ。もってこいだ。誰があの(専制的で非民主的な)サウジアラビアと協力しているのか?アメリカ、イギリス、フランスだ。誰が(エジプトの独裁者)ムバラクと大の仲良しだったのか?それはイスラエルであり、アメリカであり、ヨーロッパだ。湾岸諸国ともそうだ。
自由を求めて戦う人たちを抑圧し、迫害する独裁者たちのお友達が、いわゆる「欧米の価値観」を持つ国々だ。…
アラブ世界には善き人々がたくさんいるというのに誰もそれに気付かない。3億4000万人もいるというのに。人の首を切断しているごくごく一部の野蛮な人たちのみに目を奪われる。誰も善き人々を見ようとしない!
イスラエルも欧米も、そういう状況を望んでいる。しかし、(ごく一部の人たちを見て、イスラム教徒が全員そうだと)信じてはいけない。いくらイスラエルや欧米が、そう信じさせようとしても。そうでなければ、将来もまた私たちがツケを払わされることになる。
問:日本人として何が出来るか教えて下さい?
答:自由人であれば何をすべきかは人から言われなくても分かるはずです。私が言わずとも、分かってくれるはずです。私たちは強い。しかし、自由を求める人々、真摯に取り組む人たちが私たちと連帯してくれるなら、私たちはもっと強くなれます。
今回のガザ侵攻では、世界各地でデモが起きました。東京、ニューヨーク、ストックホルム、パリ、ロンドン、マドリード、オランダ、南アフリカ、などなど。私たちは大変勇気づけられました。エクアドル、アルゼンチン、ブラジルでも起きました。
それは自由な人たちがしていることです。私たちがお願いしなくても、自分の頭で考えて行動しているのです。自由に自分の頭で物事を考え、真摯に物事に取り組む人たちは、何をすべきか知っています。いつ行動をとるべきか分かっています。
そのような支持。それはパレスチナに対してだけではありません。正義を支持することにもなるのです。1カ所に対する支持ではありません。世界中の正義を支持し、平和を支持することなのです。
今回日本ではみなさんからとても良くして頂きました。おもてなしも素晴らしく、そして素晴らしい講演の機会を頂きました。旧交を温めるとともに新しい友人もできて、とても満足しています。美しい自然に触れる機会もありました。辛い時ほど、自然は有り難いです。日本の料理も酒も楽しみました。
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ラジ・スラーニ 各会場の講演と質疑:
10月11日 東京大学
⇒ 質疑応答
10月12日 東京大学
10月13日 京都大学
⇒ 質疑応答
⇒ 京大講演 IWJ 動画 「ガザに生きる―尊厳と平等を求めて」
10月15日 広島大学
⇒ 質疑応答
10月17日 東京四谷講演 弁護士集会
⇒ 質疑応答
2014-10-19 19:13
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