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戦争犯罪の責任を問う(1) [中東]

ラジ・スラーニ講演 広島大学 2014年10月15日 

ガザ封鎖の国際法違反

7年前、イスラエルはパレスチナのガザ地区を封鎖するということを決めました。ガザを、人も物も出入り出来ない状態にするということです。ガザ地区は面積365平方キロメートル(訳注:東京23区の60%ほど)、人口200万人近く。世界で最も人口密度の高い所の一つです。周りは海と陸地です。それをイスラエルが支配しています。西の海から。そして北、東の陸もイスラエル。南はエジプトで、12.7キロの国境です。ガザ地区は南北に細長い、狭い土地です。

そこが完全に封鎖されました。イスラエルはなぜそのような封鎖をするのでしょう?それはパレスチナの選挙でハマスが勝利したからです。それは素晴らしい、公平で民主的で透明性のある選挙でした。そのような選挙は初めてのことでした。パレスチナのみならず、この地域全体にとっても、先例のないことだったのです。封鎖の狙いはハマスを政治的にも物理的にも弱めようということです。

人権の分野に関わる人たちは、これはもうパレスチナ人、イスラエル人を問わず、あるいは国際機関の人たちも、異口同音に、イスラエルによるガザ封鎖は違法であり、非人道的であり、(国際法で禁じられている)集団懲罰に当たるもので、解除されなければならない、と言っています。民主的な選挙があったからといって市民が苦しめられている、誰もそんなことをする権利はないはずだ、と言っているのですが、誰も耳を貸しません。

この国際法違反、国際人道法違反の犯罪的な政策の結果、戦争犯罪が犯されているということに関しては、コンセンサスがあります。そのようなイスラエルの政策の結果、ガザの人々の60%が失業、収入がないと言う状態ですし、90%が貧困線以下の生活であり、85%がUNRWA国連難民救済事業機関、WFP世界食糧計画、その他救援団体の配給に依存した生活となりました。ガザはさながら動物農場です。世界が気前良く食糧や医薬品を恵んでくれます。

イスラエルの司法制度は素晴らしいと言われ、中東の民主主義の鏡とも言われるのですが、私たちがイスラエルの高等裁判所に訴えを起し、ガザの封鎖は違法であり、犯罪であり、解除すべしと主張したところ、私たちのPCHRパレスチナ人権センターのホームページにあるような判決が下されました。それは、言ってみれば次のようなものでした。心配しなくていいよ。ガザの人たちが飢え死にするようなことにはならないから。ガザの人たちの1人当たりのカロリーを計算して(封鎖をコントロール、ガザに入る物資の量をコントロールして)誰も飢え死にしないようにするから、という判決だったのです。これは恥ずべきことであり、これは人種差別であります。

ガザ侵攻の国際法違反

今年の夏は毎日のように爆撃がありました。砲撃、艦砲射撃、アパッチ・ヘリコプターやF16ジェット戦闘機による爆撃やミサイル攻撃。それでも彼らは満足しません。

5年前の2008年暮れから2009年にかけて、さらに2012年にもありました。2回の犯罪的な侵攻がすでになされていたのです。ものすごい軍事攻撃です。ガザの経済を麻痺させ、貧困をもたらし、ガザの200万人を社会的・経済的に窒息させてきました。
(要約:1,600件の訴えを起こすも、イスラエル兵への有罪判決はわずか4件:クレジットカードを盗んだ1人、人間の盾を使った2人、女性とその娘が白旗を掲げているにもかかわらず殺した1人。しかもわずか6ヶ月の刑。執行猶予付き)

(要約:国連人権理事会からゴールドストーン調査団。しかしICCへのプロセスに待ったがかかる)

(要約:2つの戦争。忘れ去られた。イスラエルの責任は問われない。
 普遍的管轄権でも。ICCでも)

問われないイスラエルの責任

イスラエルの責任は問われません。イスラエルを無罪放免にしたのです。フランスが、イギリスが、ドイツが、スペインが、政治的に、法的に、イスラエルを無罪放免にする。世界に実況で伝えられたイスラエルの戦争犯罪にです。となれば、イスラエルにとってそれは、もっとやりなさい、もっとひどいことをやりなさい、という後押しでしかありません。

二つの戦争。戦争犯罪。ガザの封鎖。そして市民がその嵐の真っ只中です。彼らこそが、この犯罪的で好戦的な占領の真の犠牲者なのです。

そのあと国際会議が開かれ、ガザを復興再建するということになりました。しかし、ガザの封鎖は続いたのです。封鎖が続けば、ガザは前と変りません。破壊の状況が続きます。何も改善しません。

ですからイスラエルは三つ目の戦争を決断しました。6年で3つの戦争です。想像してみて下さい。10歳の男の子がいたとします。女の子でもいい。その子は、これまでガザの人生、戦争に次ぐ戦争に次ぐ、3つの戦争です。その心理的、肉体的影響を考えてみて下さい。その不安と恐怖と衝撃を。

すさまじい殺戮と破壊 市民と民間施設が標的

私は60歳になりますが、今回ほどのものはこれまでの人生で一度も経験したことはありませんでしたし、予測もしていませんでした。今年の夏ほどの犯罪的な侵攻は。

私が特に驚くのは、イスラエルによる言い訳。そして、殺戮と破壊の甚だしさ、戦争の質です。

西岸地区でイスラエル人の若い入植者3人が誘拐され、殺されました。犯人は逮捕されず、誰の犯行かも分かりませんでした。数時間後、大がかりな捜査が開始され、数日間続きました。西岸地区ヘブロンで始まり、外出禁止令が出され、家から家への捜索。パレスチナ人は殴られたり、屈辱的な扱いをされ、老いも若きも、西岸地区全土で同じような目に遭わされたのです。そうして、2,100人が拘束されました。うち47人はパレスチナ評議会員(訳注:国会議員に相当)。その間、パレスチナ人13人が殺されました。うち9人が子供です。パレスチナ人の1人のこどもなど、ユダヤ人入植者たちから口にガソリンを流し込まれ、火を放たれ、焼き殺されました。

3週間後、イスラエルはこう考えます。そーか。西岸地区のハマスの犯行じゃなかったのか。ガザ地区のハマスの指導部がやったことなんだ。彼らがお金を出し、指示を出して、やらせたことなんだ。

こうしてガザ地区への攻撃が始まり、それが1週間続いてハマスのリーダー7人が殺されました。ハマスはイスラエルとの境界に2012年以来、4,000人の兵士を動員していました。それは防衛のためです。そしてロケット弾をイスラエルに対して発射しないようにしていました。しかしもうその態勢は続けられません。毎日、絶え間なく、イスラエルの攻撃が続いているのです。

イスラエル軍4万人がガザに侵攻して来ました。イスラエルには(レバノン戦争のときから使っている軍事ドクトリン)ダヒヤ・ドクトリンというのがあります。地域一帯を(戦闘員も市民も、軍事施設も民間施設も区別せず)破壊しまくるという方針です。それを、ガザのベイトハヌーンやシュジャイーヤやホザーやファラヒンなどに対して使ったのです。シュジャイーヤでは朝の2時半から7時半の間に、15万人が着の身着のまま、子供や高齢者を抱えて避難しました。それはもう、地獄の門を開いたかのような、凄まじい殺戮と破壊でした。そこから逃れてきたのです。

そしてイスラエルはハンニバル・ドクトリンを3回使いました。3カ所に対してです。これは1地域の建物すべてを破壊し尽くし、全員を殺す、というものです。それも、イスラエル兵1人が、ハマス側にとらえられたらしい、ということでです。イスラエル軍は3つの地区を徹底的に破壊し尽くしました。

今回、54万人の避難民が発生しました。家に攻撃を受け、もう家にいられなくなった人々です。しかし、ガザには安全な場所はもうどこにもなくなっていました。18万人以上が家を失いました。

UNRWA国連難民救済事業機関が運営する学校も攻撃を受けました。GPSを使った正確な場所をイスラエル軍に伝えているにもかかわらずです。学校に避難して来た女性や子供が、夜寝ている間に攻撃を受けるのです。そうやって多くの人が亡くなり、負傷しました。

病院も攻撃されました。一部の病院は完全に破壊されました。アル・ワファ病院もそうです。高度の医療、専門的な医療を提供できる数少ない病院の一つで、重い病気や障碍を抱える人たちにとっては欠かせない施設です。病院によっては手術室も爆撃を受け、救急車も、何台も攻撃を受けました。乗っていた病人/負傷者、看護師も亡くなっています。

アメリカでは911のツイン・タワーですが、ガザにもパレスチナのツイン・タワーとも言うべき14階建ての美しい集団住宅が3つありました。それぞれ120世帯ほどですが、攻撃を受け、一瞬にして瓦礫の山と化しました。一瞬にして数百世帯が、住む場所を失ったわけです。
(要約:ガザに一つしかなかった発電所も破壊。水道、下水処理施設、工場およそ450カ所も破壊)
(要約:証拠を記録して法的な文書にもした。戦争犯罪、人道に対する犯罪、ジャングルの掟であるのは明白。人権団体、国際機関のコンセンサスがそこにある。アムネスティー・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウオッチ、ユーロメッド、ICJ、そしてイスラエルの人権団体も)

しかしイスラエルは責任を問われません。

抵抗の権利と義務

イスラエルの若い入植者3人が誘拐・殺害されました。しかし、それで有罪になった人はひとりもいません。しかしその結果が、これまで述べて来たことです。パレスチナ人の2,246人が死亡。その81%は市民です。うち543人は子供。320人は成人女性です。

パレスチナ人の血は安い!パレスチナ人の土地は安い!パレスチナ人の命は安い!誰も気に留めません!
私たち人権弁護士、人権活動家は、忘れる権利も、赦す権利もありません。私たちは犯罪の責任を問うのです。市民に対して、戦争犯罪を犯した者たちを、人道に反する罪を犯した者たちを、その意図的な犯罪ゆえに、いつの日か、法廷で裁くのであります。

私たちには、犯罪的、好戦的な占領の「大人しい犠牲者」たる(泣き寝入りする)権利はありません。戦争犯罪が、人道に対する罪が、白昼堂々犯されているというのに。

20年前、オスロ合意が結ばれました。私はオスロ合意を高く評価するものではありません。それは私が平和に反対するからではありません。私は平和を最も強く支持する者の1人です。私がオスロ合意に反対するのは、そこに基本的、根本的な平和、法の支配、人権というものが、ないからです。

オスロ合意によれば1999年5月4日までにパレスチナ国家が実現しているはずでした。オスロ合意から20年たって、今なおそれは実現していません。

ラビンを暗殺したのは私たちではない!ユダヤ人だ!アラファトを暗殺したのは私たちではない!ユダヤ人だ!ガザを封鎖し、集団懲罰を与え、ガザを貧困にし、3度侵攻して来たのは私たちではない!彼らだ!イェルサレムで民族の浄化を進め、ユダヤ化を進めているのは私たちではない!彼らだ!西岸地区で新型のアパルトヘイト(人種隔離)を進めているのは私たちではない!彼らだ!

私たちにあきらめろと言うのか!私たちは降伏しなくてはならないと言うのか!私たちに、この土地から出て行けと言うのか!私たちには抵抗する権利はないと言うのか!私たちに、妻や娘や息子や老いた父母を守ることせず裏切り卑怯者になれと言うのか。抵抗が犯罪だと言うのか!

みんながこの犯罪的で好戦的な占領のことを忘れている。私たちの生活を支配し、生活を破壊し、命を奪い、未来を殺しているこの占領のことを。しかし私たちは諦めません。私たちに降伏する権利はないのです。大人しい犠牲者たることは、人間的ですらありません。

フランス人はこう言いました。抵抗は権利であるばかりか、義務である、と。自由を求める人なら、抵抗しなくてはならないのです。人間とはそういうものです。私たちもそう思います。

これは正しく公平な正義の戦い、大義だと思っています。そのために今、大変な犠牲を払っていますが、それは自由が尊いものであり、尊厳が尊いものであると思うからです。

(要約:広島で見た石碑。「過ちはくりかえしません」。ショックだった。罪は原爆を投下したアメリカにある。人道に対する犯罪だ。繰り返しませんと言うべきは、アメリカだ。なぜ、日本の市民が、犠牲者が、過ちを犯したというのか?!…)

しかし、それはまさにイスラエルが私たちに対して言って来たことでもあります。私たちは犠牲者なのに、イスラエルは謝れというのです。イスラエルのほうが道徳的には優位であり、パレスチナ人がイスラエルに悪いことをさせる、人殺しをさせるというのです。…

真理はこうです。困難に立ち向かうことを諦める権利は、私たちにはないということ。私たちは強靭です。私たちは占領に抵抗しました。彼らに抵抗することが私たちの権利であり、義務であることを、身を以て示したのです。それはハマスの抵抗ではありません。ファタハの抵抗でも、PFLPの抵抗でもありません。パレスチナ人の抵抗、パレスチナの解放運動なのです。私たちには、犯罪的・好戦的な占領に屈することなく、抵抗する厳然たる権利があるのです。

私たちは勝利する

私たちは明日が私たちのものであることを知っています。私たちは確信しています。私たちはいつの日か、勝利するのです。それまで、私たちの戦いを支持する人々と共に、戦争に反対し、占領に反対する人々共に、正義ある恒久的な平和とパレスチナの自決権を求める人々と共に、全力をあげて戦い続けます。

本日は素晴らしい機会を頂き本当に感謝しております。広島大学の学長さま、総合科学部の学部長さま、ありがとうございました。そして皆さん、ご清聴ありがとうございました。




ラジ・スラーニ 各会場の講演と質疑:

 

1011日 東京大学

 ⇒ 講演「沈黙という名の共犯関係」

 ⇒ 質疑応答

1012日 東京大学

 ⇒ 土井敏邦監督の記録映画について

 ⇒ 臼杵陽教授との対談

1013日 京都大学

 ⇒ 講演「かくも重き罪 裁かれぬ理不尽」

 ⇒ 質疑応答

 ⇒ 京大講演 IWJ 動画 「ガザに生きる尊厳と平等を求めて」

1015日 広島大学

 ⇒ 講演  「戦争犯罪の責任を問う」

 ⇒ 質疑応答

1017日 東京四谷講演  弁護士集会

 ⇒ 講演「ガザの封鎖を解いて下さい」

 ⇒ 質疑応答

 

 


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