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北朝鮮やがて暴動・暗殺が起きることにもなるやも知れず(元KCIA分析官) [北朝鮮]

金正恩2019.jpg
北朝鮮は国連の制裁で思いのほか厳しい状況。
経済を改革し外から物を入れるようになっていたから、制裁が効く。
90年代の苦難が再来するかも知れない(飢餓)。
しかし、北朝鮮の人民は変わった。かつてほど従順ではない。保安員(警察官)に食ってかかる。
金正恩もそのことを恐れているふしがある。
やがて暴動が起きるかもしれない。
指導者が暗殺されるかもしれない。
話は亡命政府の樹立にまで及んだ。
質疑では非核化、文在寅、米朝、中朝、日韓関係などにも触れる。

金正奉(キムジョンホン)

金氏は北朝鮮分析の第一人者。長らく韓国の情報機関にいて、歴代政権に政策の基盤を提供してきた人。
今は韓国メディアにコメンテーターとしてよく出てくる。日韓軋轢のおり、耳を傾けるべき人。
(1979〜2007:韓国中央情報局、国家情報院北朝鮮情報担当官、国家安保戦略研究院院長、韓国U1大学教授)

北朝鮮の強制収用所をなくす運動をしているNGO「No Fence」主催

スカイプを通じて都内で行われたこの日の講演。メモから再現する:

金正奉講演会:

北朝鮮は権力を維持するために二つの手段がある。

1)国民を騙すこと
2)暴力

しかし1)がだんだん通用しなくなってきた(*1)。

北朝鮮に今、携帯電話が600万台。去年は中国人が20万人観光客としてやってきた。携帯電話からは様々の出来事が現場から動画として伝えられている。

こうなると残るは2)の手段、暴力を振るう、ということだが、国際社会の目を気にしてこれを抑制する事例が増えている。刑事事件の取り調べでも暴力を振るうことが減らされるようになってきた。

これまでは年に100件と公開処刑が行われていたが、減ってきている。国際社会の目を気にしているのだ。公開処刑が減ったからと言って、死刑が減っているわけではない。収容所送りになるという人権侵害が減ったわけでもない。目に見えないところに移っただけである。


2018年4月27日の南北首脳会談のあと、そのとき使った北の迎賓館に当たる施設の所長が、多額の外貨を隠し持っていたことが発覚。軍で大佐の位の人物だったが、平壌で公開処刑となった。なぜそうなったかというと、文在寅を迎えるために改装工事が行われ、莫大な金額の請求が上がってきて、それを知った金正恩が激怒したというのだ。「こいつは、これまで様々な工事を巡って多額の資金を着服しているだろうに…」と。ガサ入れが命じられ、所長の中国の隠し口座に数百万ドルあることがわかり、所長は公開処刑。

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なぜ処刑?

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護衛司令部の幹部も、不正、腐敗に染まった物は処刑。彼らが巻き上げる金は人民のものだから、ということだ。その狙いは: 

1) 体制の安定
2) 国連の制裁で苦しい中、できるだけ資金を回収

北朝鮮の幹部が体制に忠誠を誓うとすると、それは主体思想を信じているからではない。贅沢な生活ができるからだ。しかし、国連の制裁のおかげで、なかなか贅沢できなくなってきている。しかし、ガサ入れをしたらひっかからない幹部などいない。

人々は今や主体思想、金日成主義より、市場(チャンマダン)で稼ぐことで生きている。市場で自力で金を稼ぐ。これぞ自分たちの「主体思想」の実践だと体制に当てこすりを言う。朝鮮労働党員になるのが出世の大切な要因であることに変わりはない。それが人気を失ったわけではない。しかし今では、市場で金を稼ぐことが大変人気である。

人々は北には「ダン」が二つあると言う。労働党(ノドンダン)と市場(チャンマダン)だ。労働党は何もしてくれないが、市場は食わせてくれる、と。

今、国連の制裁が続き、厳しい状況が続いている。党であれ、政府であれ、軍であれ、上からお金が降りてくるわけではない。それぞれが、地下資源を採掘するなりして、自分で資金を調達しなくてはならない。

副部長クラスの人間が韓国に来て対南工作員になるとしても、無煙炭や鉄鉱石を中国に売るなりしてスパイ活動の資金とするのだが、今は国連制裁でそれができない。

北の体制はいま、制裁で悶え苦しんでいる。その具体的な現れが今年2019年2月27日、28日のハノイの米朝首脳会談だ。金正恩は最初から最後まで制裁解除の話ばかりだった。


しかしいま市場では米、食料、油、価格は安定している。どういうことかというと、市場で北の通過に価値はない。だから中国元やユーロで決済するが、制裁のため外貨の流入が限られている。通貨の量が少ないためにインフレになりようがなく、価格は低いままなのである。

中国への輸出は、国が正常に機能するためには30億〜40億ドルの外貨を稼ぐ必要がある。しかし輸出は20分の1になった。しかし、輸入はそんなに減っていない。25億ドルの輸入が引き続きある。

現金は、1)祖父から引き継いだ秘密資金、2)海外にいる労働者から巻き上げる金、3)在外公館がタバコの密売などで稼ぐ金、がある。それらを金融機関を通さずに現金で持ち込むのだが、それも限界に達した。

北は経済制裁を受けても自力更生でしぶとく生き続ける国であるはずだった。しかし対外依存度が55%上昇、金正恩時代になって市場の拡大を促し、市場は外からの物でまかなっているから制裁が効く。

今年4月12日、人民会議で金正恩が演説し、「今年年末までにアメリカの態度を待つ」と言った。つまりそれまでが限界ということか。 労働新聞も中央テレビも「自力更生」を盛んに強調する。全国民を動員し自分たちの力で、というのだが、いまの状態が続けば、1990年代の「苦難の行軍」の再来か。

しかし90年代の北朝鮮の人たちといまの人たちはかなり違う。90年代の人々に外からの情報はなかった。韓国の人たちの豊かな生活の事は知らなかった。

かつて警察の取り調べを受けた北の人たちは従順だったが、今は食ってかかる。襟首をつかんで反論する。保安所(警察)の課長クラスが殺される事件すら起きている。

北でも法律上は保安員(警察官)が家宅捜査をするには検察の礼状が必要である。しかし、礼状なしに恣意的に行われてきた。しかし、今の若い人たちは抗議する。保安員が捜査を諦める事例も起きている。まだ最悪の事態ではないので、少し先走った話になるが、今、90年代のような苦難が起きても、今の人たちは黙って餓死はしないだろう。

金正恩も、いかにそんな自国民を恐れているか、彼の振る舞いを見ているとわかる。ハノイの米朝会談の決裂後、静かだった。まるでハノイの会談は成功だったとでも言わんばかり。機を待って、日本を非難する記事の中にもぐりこませてハノイの失敗を知らせている。あるいはハノイ直後に宣伝部門に、指導者の神格化は良くない、人民に近い存在であることを妨げる、などと言わせてみたりしている。2月には「自分の能力が及ばず、気持ちが焦る」などと自分の心情を吐露という演出。人民がかつての人民と違うことを意識していることがうかがえる。

ハノイへ発つ前、労働新聞はじめ全メディアが「愛国の一大挑戦」「トランプと直談判」などと国連の経済制裁解除への期待を高めた。しかし決裂し人民もがっかり。人民は金正恩の能力に疑いを抱き始めた。決裂は制裁が続くということ。指導者への信頼が崩れ、打撃となった。

しかし、それを一掃したのが、6月20日のトランプとの板門店でのショーであった。人民は気持ちを紛らわされた。しかし、制裁が続き、生活の苦しみが続けば、やがて人民の憤りが増してくるだろう。

気の早い話ではあるが、もし1990年代の「苦難の行軍」の再来となれば、首都から離れた地方部で騒乱が起きるだろう。1990年代も騒乱が起きた。ただ、報じられなかった。そして、当時の騒乱は政権を倒すことが目的ではなかった。中間幹部を責め、最高指導者の思い通りにちゃんと仕事をしていないと非難するのが目的だった。

かつての通念だと、暴動やクーデターのような事態は起き得ないということだった。なにせ人民には移動の自由がない、情報も遮断されている、と。しかし、今は、金さえ出せば、移動の自由は得られる。情報は、10万人という人々とともに入ってくる。韓国のドラマや映画、音楽など、人々は様々なことを知っている。暴動の起きる条件が揃ってきた。

平壌から離れたところの暴動で体制を倒せるか?それは難しいだろう。もし地方で暴動が起きたら軍を投入して、強硬に押さえつけるだろう。死者も多数出るだろう。しかし、以前と違うのは、携帯電話を通じその動画や写真が瞬く間に拡散することだ。軍隊が人民を殺す。クーデターとはならなくても、反体制派、金正恩をどうにかしなくてはならないという勢力が、生まれるはずだ。

韓国では1960年4月のデモで学生や市民が李承晩(イスンマン)を倒した。1961年5月にクーデターで政権を奪取した朴正煕(パクチョンヒ)は1979年10月に暗殺された。北朝鮮でも今後暗殺で政権が代わる可能性が高いだろう。

朴正煕の1979年の暗殺の引き金はデモに対する強硬な鎮圧だった。それに対する怒りをKCIAの部長が朴正煕に向けた。地方の暴動への強硬な鎮圧、それが暗殺の引き金だったのだ。

北朝鮮では最近、護衛司令部の幹部、高官の身辺警護をする人たちが、不正や腐敗を理由に次々と殺されている。この動きは北の高級幹部へ相当の衝撃を与えているはずだ。北朝鮮はまだ暴動が起きるほどのどん底ではない。だから先走った早い話ではある。

中央から金が降りてくるのではない。党も政府も軍もそれぞれが自分で外貨を稼いで事業を行っていかなくてはならない。例えば、軍がトラックや運転兵を民間に貸し出す。それで月100万ウォン。

平壌の未来科学者通りなどのマンション。これも国家の金ではなく、民間富裕層の金を使う。富裕層からカネを集め、中国へ行って資材を調達、人は軍から投入。こうして建てたマンションは、投資した富裕層に他の人たちより安く優先的に分譲するという仕組み。軍資本主義とでも言うべきもの。

しかしそのマンション価格が半額に暴落している。制裁で資金の流入が止まっているからだ。去年までは見晴らしのいい部屋で30万ドルしたものが今では15万ドル。

農業も「補填管理制」が導入され画期的と言われた。個人経営で、収入の30%を国に納入、70%は個人が自分のものにできるとされた。期待が高まったが、農業のノルマは高すぎ、国がほとんど持って行き、失望。責任者は農業をやめて市場で商売に熱を入れる。

軍に関しては力をそぐことが行われている。金正恩は権力を握った頃からやっている。当初、目的は軍の利権を奪って金を経済に回そうということだった。しかし、最近のやり方を見ていると、軍に脅威を感じていることがわかる。軍の力を恐れており、その脅威をそごう、防ごうとするやり方。

4月に憲法改正を決定したが、先軍政治という言葉も削られた。

自由朝鮮について

正男氏の息子保護の団体、北朝鮮「亡命政府」樹立を宣言
https://www.afpbb.com/articles/-/3213700 @afpbbcom

自由朝鮮が亡命政府を立ち上げた。亡命政府となれば北の人間でなければトップは務まるまい。韓国に亡命した元大臣クラスの人物が実質的な力を持っているものと思われる。エイドリアン・ホンが対外的にはトップと言われているが、実際は脱北した元高官がトップのはず。それ以上、詳しくは話したくない。

2009年、黄長燁(ファンジャンヨプ=脱北した朝鮮労働党書記)は死ぬ前にエイドリアン・ホンから亡命政府の主席に就くよう要請を受けた。ホンは2017年の金正男(キムジョンナム=正恩の異母兄)にも暗殺される前に首班となるよう要請。金正男の長男・金漢率(キムハンソル)をアメリカに逃すのにも成功している。

金漢率を亡命政府のトップに据えるのではという憶測もあるが、自由朝鮮は三代の世襲を終えようと言っているのだ。四代世襲はありえない。最近、自由朝鮮も漢率をトップだなどとは考えたこともないと明言。

自由朝鮮は能力的には、スペインで北朝鮮大使館の襲撃事件も起こすことができる。当初10人と言われた。しかし襲撃したのは7人。大使館員が縛られているのに気付いた北朝鮮の留学生3人も防犯カメラの映像にあったための誤報。襲撃に加わったのは7人だった。

エイドリアン・ホンは、元々は「リンク」(LiNK=Liberty in North Korea)。これまで北朝鮮人1,000人を救出しているという団体。リンクはアメリカに数十の支部がある。エイドリアン・ホンは最初、自由朝鮮のことは知らなかった。

二点。一つは、自由朝鮮のメンバーがFBIの指名手配を受けており、その分、活動は下火になるということ。しかし、二つ目に、「リンク」も自由朝鮮に参加するだろうということ。そうなると活動は活発になる。

エイドリアン・ホンが始めた「リンク」は、脱北者を助けるために北朝鮮内部に協力者のネットワークがある。CIAがそこに着目し、エイドリアン・ホンを利用した実績がある。しかしエイドリアン・ホンの動きは、金正恩にとっては目の上のたんこぶくらいにはなれても、暴動が起きた時、代替勢力たりえることはないだろう。

代替勢力は軍部だが、党に掌握されている。だから党と手を結ばないと代替勢力は北朝鮮の権力を掌握することはできない。自由朝鮮の「亡命政府」の限界がそこ。党中央の一部と繋がる必要がある。


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質疑応答のもようは次回といたしましょう:


質問1:中国の習近平が金正恩と会談をしているが、中朝の非核化協力、本気なのか?

質問2:文在寅政権の本心は?

質問3:文在寅は人権活動家、人権弁護士として軍事独裁体制と闘った実績のある人。
なのに、なぜ北の人権問題を避ける、なぜ正面から取り組まない?

質問4:6月30日に板門店で米朝会談があった。非核化がトランプの本心?

質問5:北の人権侵害をなくすため、あるいは北の体制を倒すため、
制裁圧力や軍事圧力をかけることはできる。しかしそれで状況は変わらない。軍事行動が必要?

質問6:徴用工問題で対抗措置。悪化する日韓関係をどう見る?

質問7:金正恩は自らの偶像化を進めようとしているのか?

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