マタイ受難曲(大阪語版) [音楽]
高校生のときガリ版刷り(今の人は何のことか分からんやろな)日独対訳版で読んで以来、 いくつかの版で親しんできたが、この大阪弁訳には衝撃を受けた。
その生々しさ。
自分は関西弁は母語ではないが、深いところに響く。
自分に近いところというか。何か迫って来るものがある。
これを聴いたあと日本語標準語訳はもう見れん。
あまりにも人工的な不自然なものに響いてしまう。
偉大な訳業だ。
そしてこの音楽のすばらしさ。
以下無断で転載させてもろてますぅ(肥後弁版のとこ以外):
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J. S. バッハ作曲「マタイ受難曲」:
新約聖書に4つある福音書のうち「マタイによる福音書」(26賞と27章)により
イエス・キリストの受難を描いた音楽劇。
それが、十字架上の死の予告に始まりイエスの死まで大阪語で繰り広げられることに。
(死の予告、イエス捕縛の共謀、ユダの裏切り、最後の晩餐、オリーブ山の預言、ゲッセマネの苦しみ、捕縛、審問、ペテロによる否認、ユダの後悔、判決、むち打ち、十字架を背負いゴルゴダの丘へ、十字架上のイエス、イエスの死、埋葬)
第01曲
合唱『来なはれ、娘さん 一緒に嘆こやないかい』
見てみい 誰をやねん?
殺されてしもた
見てみい 何をかいな?
あの辛抱を見なはれ
どないに辱め受けようとあの辛抱やで
見てみい 何処をやねん?
わてらの罪を
あんさんは全ての罪を負わはった
見なはれ
十字架を担がはるお方を!
しんぼぅしいな。見なはれ。あてらのわるさや。ねえちゃん、わたいの泣くの手助けしてくれまへんか。
おお罪のあらへん子羊
見なっせ
子羊のごたる
見なっせ 誰ばね?
花婿さんたい
来なっせ、娘さん
一緒に嘆こばい
殺されてしもたったい
見なっせ 何ばね?
あの辛抱ば見なっせ
どぎゃん辱めでん受けるてゆう辛抱たい
わたしらの罪ば負いなはった
見なっせ、愛と慈しみのために
十字架ば担ぎなはる方ばい
第02曲~第08曲
レチタティーヴォ (福音史家、イエス)『イエスはんは、これらの話をみな語り終えると』
イエスはんは言わはった
二日後は過越祭ちゅう祭りやろ
その日に引き渡されるんやで
人の子は十字架に掛けられるんや
イエスはん 何をやらはったんでっか
こないにごっつう重い判決
どないな罪ですのん
第09曲~第10曲
レチタティーヴォ (アルト)『愛する救世主はん』 アルトのアリア、フルート
懺悔と後悔が
罪の心を真っ二つに引き裂いてまう
わての涙の雫は
ええにおいのする香油になりまっせ
第11曲~第12曲
レチタティーヴォ (福音史家、ユダ)『そん時、12人の弟子の1人でイスカリオテのユダちゅうもんがおって』
なんぼくれまっか?
あの男を売り渡しまっせ
銀貨30枚でどうや
ソプラノのアリア:
血ぃ流しなはれ
ああ!あんさんが育てはった子
その子は蛇になってしもた
第18曲~第19曲
第30曲~第32曲
(つづく)
第13曲~第17曲
■第13曲 レチタティーヴォ (福音史家)『除酵祭の第一日目のことやった』
■第14曲 合唱『過越の食べ物の用意は どこにしたら よろしおまっか?』
■第15曲 レチタティーヴォ (福音史家、イエス)『イエスはんは言わはった』
合唱『わいのことでっか?』
わてと一緒に鉢に手を入れてるものが
わてを裏ぎる
せやけど人を裏切るそいつは
かわいそうな奴なんやで
■第16曲 コラール『わてのことです わてこそ罰せられなあきまへん』
■第17曲 レチタティーヴォ(福音史家、イエス、ユダ)『イエスはんは答えて言わはった』
取って食べなはれ
これはわての体や
みんな、この杯から飲みなはれ
これは、罪が赦されるように
ぎょうさんさんの人のために流す
わての契約の血ぃや
■第18曲 レチタティーヴォ (ソプラノ)『わての心は涙の中を漂うんや』
■第19曲 アリア (ソプラノ) オーボエ、ファゴット『あんさんに わての心を捧げまっせ』
イエスはんがわてに
別れをつげはった
せやけどイエスはんの契約は嬉しいもんでっせえ
イエスはんの肉と血ぃ
残してくれはった
付き従う者をさいごまで
愛して下さるんやで
第20曲~第23曲
■第20曲 レチタティーヴォ (福音史家、イエス)『みなはんは、賛美の歌を歌うてから』
賛美の歌を歌うてから橄欖山の方へ出かけたんやと
「今夜あんたらはみんなわてにつまずくやろな」
■第21曲 コラール『わてに目を留めて下さい わての守り主はん』
■第22曲 レチタティーヴォ (福音史家、ペトロ、イエス)『ほなら、ペトロはんが 答えて言うたんや』
わては絶対につまずいたりせえへん
「今夜、にわとりが鳴きよる前に
あんたは3度、わてのことなんか
知りまへんて言うやろな」
あんさんを知らんなんて言うはずおまへんがな
■第23曲 コラール『わてはあんさんの そばにおります』
どうか、わてを軽蔑せんといてください
あんさんのもとを離れたりしまへん
第24曲~第26曲
■第24曲[00:00~]レチタティーヴォ (福音史家、イエス)『ほてからイエスはんは お弟子はんらと一緒に』
ゲッセマネちゅうとこへ行きはってお弟子はんらに言わはった
「わてがむこうへ行って祈っとる間ここで座って待っといてんか」
■第25曲 レチタティーヴォ (テノール) と合唱『おお 痛ましいことやで』
イエスはんはごっつう悲しゅうならはって
身悶えしはるほどやった
ほいで、彼らに言わはった
「わてはな、今、死ぬほど悲しゅうなっとるんや
せやさかい、ここにおって
わてと一緒に目ぇ覚ましとてほしいんや」
おお 痛ましいことやで
こないな苦しみはどこから来るんやろ
ああ、イエスの旦那はん
わての罪が招いた苦しみをあんさんが耐えてはるんや
■第26曲 アリア (テノール/オーボエ) と合唱『わてはイエスはんのもとで 起きてまっせ』
わてはイエスはんのもとで起きてまっせ
ほいだらわてらの罪は眠ってまうんや
イエスはんの魂の苦しみがわての死を償い
イエスはんの悲しみがわてを喜びで満たすんや
せやからイエスはんの尊い苦しみは
苦いもんやけどそれでも甘いもんなんやで
第27曲~第29曲
■第27曲 レチタティーヴォ (福音史家、イエス)『ほてから、少し前に進んで うつ伏せにならはって』
■第28曲 レチタティーヴォ (バス)『救いの旦那はんは オトンの前に ひれ伏してはる』
■第29曲 アリア (バス)『喜んでわては受け入れまっせ』
「おとうはん、できることやったら
このごっつう苦い杯を…
せやけど…御心のまんまでよろしおます」
こうしてわてらみんなを堕落の淵から
もいっぺん神さまの恵みのもとへ
引き上げてくれはるんや
旦那はんは覚悟を決めて
死の苦い杯を飲み干しはる
この世の罪が注ぎ込まれとって
めっちゃ臭いその杯を
喜んでわては受け入れまっせ
十字架と杯を…
救いの旦那はんにならって
飲み干すことを
■第30曲 レチタティーヴォ (福音史家、イエス)『ほてから、イエスはんが戻らはると』
「あんたらはひと時もわてと一緒に目ぇ覚ましてられへんのかいな?
目ぇ覚まして祈っとき!誘惑に負けたらあかんで
心は熱うても肉は弱いもんや」
「お父はん、この杯…わてが飲みますさかい…」
■第31曲 コラール『わての神さまの御心は いっつも成就するんやで』
神さまを堅く信じる者を
神さまは見捨てたりせえへんのやで
■第32曲 レチタティーヴォ (福音史家、イエス、ユダ)『イエスはんが戻らはると お弟子はんらは寝とったんや』
「みてみぃ、わしを裏切る者が来たでえ」
「わてがチュウしますよってそいつを捕まえてんか」
ごきげんいかがでっか、先生!
ほいでイエスはんにチュウしょった
ほなら、連中…イエスはんに手をかけて捕まえてしもたんや
第33曲
■第33曲 二重唱 (ソプラノ、アルト) と合唱『こないにして わてらのイエスはんは 捕まってしもた』
やめてんか、縛ったらあきまへん!
イエスはんは縛られて連れて行かれてしもた
お月さんも悲しゅうて沈んでしもた
稲妻も雷鳴も雲ん中に消えてしもたんかいな?
業火の奈落を開いたらええがな
いてまえ
いてこましたれ
喰ろてまえ
ぶちかましたれ
ごっつう怒り込めて
あのしょーもない裏切り者
第34曲
■第34曲 レチタティーヴォ (福音史家、イエス)『ほなら 見てみぃ、イエスはんと一緒に おった者の一人が手ぇを伸ばして』
大司祭の手下に斬りかかって片耳を切り落としてしもたんや
イエスはんは言わはった
剣を元に戻さんかい 剣をとる者は剣で滅びんるんやで
自分ら剣や棒を持ってわてを捕まえに来よってからに
せやけどみんなこうなったんは
預言者たちの書いたことが成就するためなんやで
そん時お弟子はんらはみんな
イエスはんを捨てて逃げてしもた
第35曲
■第35曲 コラール『おお 人よ、自分らの罪の大きさに泣きなはれ』
せやさかいキリストはんはオトンの懐から
地上に降りて来はったんやで
ひとりの清く優しい乙女から
わてらのためにお生まれにならはって
死んどる者に命を与え
病気をみんな治してしもたんや
定めの時が来て
わてらのために犠牲になるまで
わてらの罪の重荷を担がはったんや
長いこと十字架の上で
第36曲~第38曲
■第36曲 アリア (アルト) と合唱『ああ! わてのイエスはんは 行ってしもた!』
ああ わてのイエスはん 何処にいかはったんやろか?
見つかるやろか?
イエスはんは何処に行かはったんやろか?
せやったらわてらあも一緒に探しまっせ
■第37曲 レチタティーヴォ (福音史家)『人々は イエスはんを捕まえた後』
ペトロはんはイエスはんのあとを追って
大祭司の屋敷まで行ったんや
ほいで…どななるんか見とったんやと
大祭司や長老たちはイエスはんを死刑にしようとしたんやけど
何にも証拠が見つからんかったんや
■第38曲 コラール『わては世の中に 一杯食わされたんや』
ウソとインチキの供述や
ぎょうさんの罠を使いよってからに
わてを悪だくみから守って下さい
第39曲~第41曲
■第39曲 レチタティーヴォ (福音史家、証人、大祭司)
『ほいで ぎょうさんの インチキ証人が出てきよったんやけど』
こいつは言うてましたでぇ
「わては神殿をぶち壊して三日で建て直すことができまっせ」て
大祭司は立ち上がってイエスはんに言うた
「何にも答えへんのかいな?証人たちが不利な証言をしよるっちゅうのに」
せやけどイエスはんは黙ってはったんや
■第40曲 レチタティーヴォ (テノール)『わてのイエスはんは インチキの嘘には黙ってはる』
ほいでおんなじような辛さの中で
わてらも旦那はんを見倣うて
迫害されても黙っとくべきやちゅうことを
■第41曲 アリア (テノール)『辛抱やで! インチキの舌が わてを刺そうとも』
無実やのに あほちゃうかと罵られ
おお、愛する神様はわての心の
無実の罪を晴らしてくれはるんや
辛抱やで!
(つづく)
『天にいたはる、わてらの神はん、
あんたはんの名前が崇められますように願ってまっさ。
ほいで、御国がきますように。
あんたはんの思いのままになりますように。
天にあるように地でもよろしゅうに。
わてらの必要な食いもんは、今日ちょうだいできますように。
わてらの至らんとこは勘弁してちょうだい、そんかわり、
わてらも他人はんの至らんとこは許しますよって。
ほいで、どうかわてらを誘惑に逢わさんとってちょうだい、
悪い奴らからも救ってちょうだい』
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