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刃物から銃へ 次は自爆攻撃なのか? (1) [パレスチナ]

刃物による一連の刺殺事件。次の注目は、

銃に移るかどうか、組織が動くかどうかだと先の投稿を結んだが(*1)その翌日の

日曜の夜にさっそく銃による事件が起きた。1人死亡、11人負傷。

犯人はその場で射殺。

法律上はイスラエル人、ネゲヴ砂漠のベドウィン族(遊牧民)だった。

ベドウィンに関してはその前に投稿したばかり(*2) 。

ここ十年あまりの間に彼らにも「イスラム運動」(イスラエル内のイスラム主義運動)の影響が及びつつあった。

家族は事件を非難しつつも、息子は現場で「処刑」されたと言っている(*3)。

もう1人、現場で治安部隊に銃で撃たれた上、群衆に暴行を受けて死亡した男は、

事件とは無関係だった。

たまたまその場に居合わせただけのエリトリア人だった。

 

 

地図:

 

ガザ

西岸地区

エルサレム

 

入植地の侵蝕

オスロ合意の

 A地区

 B地区

 C地区

 

 

刃物の段階であれば、市民の自然発生的な「一匹狼」的な事件、しかしそれが銃器となれば

より計画的であり、組織的な背後の痕跡も伺えるようになるというのが、

暴力がインティファーダに向かって次の段階に進むという考え方だったが、

ハマス「イスラム抵抗運動」のハニヤ元首相からは、過激な発言があったばかりだった。

Haniyeh: 'Al-Aksa intifada has been revived and we intend to join'

 

「アル・アクサ・インティファーダ(第2次インティファーダ)が復活した。我々も参加したい」

 ユダヤ人から「アル・アクサ・モスクを解放」したい

 

「ユダヤ人たちはアル・アクサ・モスクを乗っ取ろうとしているが、失敗する」

 

「我々はインティファーダの拡大と深化、広がりと深まりを求める。

  

 我々は君たちのことを誇りに思う。ナイフの英雄たちよ」

 

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ハニヤはイスラム教徒に金曜日の「怒りの日」の行動も呼びかけていた。

 


一匹狼でなかった可能性


日曜の発砲事件は、恐らく計画的なもので複数の人物が関わっている可能性があるとギラード退役少将

 

一方、イスラエル軍は20日、ハマス創設者の一人を拘束した。

 

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欧米からテロ組織と指定されているハマスだが(*4)、一方のパレスチナ自治政府(PA)を担うファタハは

欧米とイスラエルからいちおう和平のパートナーとされてきた(といっても和平協議は長らく中断)。

しかし、その自治政府のアッバス議長からして、暴動をけしかけていると

イスラエルから激しく非難されるところまできた。




嘆きの壁のあるユダヤ教の聖地「神殿の丘」は同時に

イスラム教の聖地、ハラム・アル・シャリフだが、そのアル・アクサ・モスクを

ユダヤ人が乗っ取ろうとしているとウソを広め、

パレスチナ人たちの不安と怒りを駆り立てている、

それが事件につながっている、というのである。

 

神殿の丘/ハラム・アル・シャリフは現状維持だと言うネタニヤフだが

アッバスはそれを信じていない(あとで書くがアメリカも信じきれていないふしがある)。

しかしアッバスがウソを広め、扇動し、テロが起きている・・

こういった非難はネタニヤフ首相からだけでなく、遠くアメリカのユダヤ人社会からも聞かれる。

US Jewish groups blame Abbas for wave of terror

 

しかしアッバスはアッバスで、イスラエル側が原因という立場。

ユダヤ人が「神殿の丘」を訪れ緊張が高まった9月半ば

アッバスはこう言っていた。

Abbas: Israelis have no right to desecrate our holy sites with their filthy feet

 

「イスラエル人がエルサレムにあるイスラム教とキリスト教の聖地を汚すことをパレスチナ人は許さない」

 

「アル・アクサは我々のものであり、聖誕教会もそうだ(*5)。彼ら(ユダヤ教徒)が汚れた足でそれらを冒涜する権利はない。我々は彼らにそのようなことはさせないし、エルサレムを守るためならどんなことでもする」

 

東エルサレムの活動家らとの会合での発言である。

 

アッバスはこのときまた、イスラエルがアル・アクサ・モスクの敷地を分断しようと企んでいるが、それはパレスチナ人が断固として阻止するとも語っている。

 

「エルサレムなしにパレスチナ国家はない」「我々はエルサレムにおり、エルサレムにとどまって我々のイスラム教とキリスト教の聖地を守る。我々は祖国を離れたりはしない」

 

「エルサレムで流される血は、その一滴一滴が清らかなものだ。それがアラーの神のためである限り。

 アラーの思し召しにより、殉教者はみな天国に召され、どの負傷者も必ず報われる」

 

これにイスラエル側は強く反発する。スタイニツ・エネルギー相はナチスを引き合いにした(10/18)。

Blood spilled by terrorists is on Abbas’s hands, says minister

Steinitz Rips Abbas’ 'Nazi-like Incitement', Then Questions Palestinian Leader’s Future


アッバスは暴力を煽動しており、反ユダヤ主義の世界一の煽動者であり、ナチスがユダヤ人に対して行なった煽動とも大きな類似点がある、というのである。アメリカのケリー国務長官は今週、ベルリンでアッバス議長と会う予定だが、煽動をやめない限り和平のパートナーとすべきでないとスタイニツ・エネルギー相であった。

 

そのケリー長官のアメリカ国務省からは、「イスラエルの煽動」が語られた。

ケリーはイスラエルの入植地建設と今回の西岸地区の事件の高まりを関連づけた。

 

「ここ何年かの間に入植活動が大幅に増えている。そして今、暴力の高まり。それは、人々の苛立ちが高まっているからだ」

 

この国務長官発言にはイスラエルが強く反発。国務省は暴力・テロを正当化するつもりはないとあわてて釈明。ただ入植地建設に反対するアメリカの立場は明白だとした。

State Department clarifies Kerry's link between terror wave and settlements

 

オバマも、これは直接的な因果関係を言ったものではないとわざわざ釈明。ただテロという言い方はしなかった。

Responsibility for 'incitement' falls on both Netanyahu and Abbas, Obama says

 

オバマは、発言で暴力を煽ったことにおいてはネタニヤフもアッバスも同じく責任があるとした。

 

「罪もない人々に対する暴力は最大級の言葉で非難するが、イスラエルには基本的な法と秩序を維持する権利もある」とも。(*6)アメリカはイスラエルの肩をもつ。大統領選挙の民主党の候補指名争いを始めたヒラリー・クリントンですら、このところの一連の事件を受け、さっそくイスラエルのこの「法と秩序」を守る権利を認めるという発言をしている。アメリカの大統領になるはどうしてもアメリカに住むユダヤ系有権者の票が必要である。そしていま、アメリカで自分は「ユダヤ人/ユダヤ系」と意識する人の数は増えている(*7)([☆]同じユダヤ系アメリカ人でもチョムスキーは出発点が違う。あとでふれる)

 

(オバマがいくら入植地建設をやめろと言っても言うことを聞かないネタニヤフ。両者の関係はかなり険悪。

 ネタニヤフはイランの「核開発」に反発し、イラン空爆を主張してきたが聞き入れられず)

 

イスラエルがさらに激しく反発したのが、アメリカ国務省のスポークスマン・ジョン・カービーの発言。

 

イスラエル人が神殿の丘に行くのは煽動か?と聞かれ、

暴力的な事態となったのは、神殿の丘/ハラム・アル・シャリフの現状維持が守られなかったから、と答えたのだ。

 

しかしすぐにこれを撤回するはめになった。現状維持が破られたと言うつもりはなかったと。

そして、イスラエルが現状維持にコミットし続けていることを歓迎する、とした。

US official retracts comment blaming Israel for terror wave

Report: Netanyahu wants US to back Israel's claim of preserving status quo on Temple Mount

 

アメリカは、ネタニヤフが神殿の丘に関する方針を変更したのかもしれない、もはや現状維持(status quo)政策ではないのかもしれないと思っている。ネタニヤフは現状維持だとアメリカからのお墨付きを欲しがっているが、アメリカは信じきれていない。

Responsibility for 'incitement' falls on both Netanyahu and Abbas, Obama says

 

アッバスは9月末に国連で演説、イスラエルとの1993年のオスロ合意にパレスチナはもはやとらわれないとした。しかし今になってアッバスから言われるまでもなく、オスロ合意ははるか以前から破綻していた。その失望からハマスがパレスチナ人の間に支持を広めていったのだった。オスロ合意から20年たってパレスチナ国家はできないばかりか、イスラエルは国際法違反の入植地拡大を続け、西岸地区ではパレスチナ人の土地と権利を奪い続け植民地化、アパルトヘイト化、これまた国際法違反の分離壁を築き、ガザは封鎖して空爆と侵攻(国際人道法違反)をたびたび行い、エルサレムでもパレスチナ人を追い出すユダヤ化が進む。イスラエルは最初からそのつもりのオスロ合意の欺瞞・からくりではなかったのかと思えるほどだ。そのイスラエルから神殿の丘は現状維持でいきますと言われて、はいそうですかと応じられるものではない。現にイスラエル極右は全部いただきましょうと声高に叫んで神殿の丘にやってくるではないか。神殿の再建計画まであるらしい。

Abbas to Israeli government: Stay away from our Islamic and Christian holy sites

 

「我々は平和を希求する。あなた方のせいで大変苦しい目にあっているが、それでも手は差し伸べ続ける」としたアッバスだが「平和的な民衆抵抗運動」には支持を表明。


パレスチナ国家が樹立されればアル・アクサ・モスクと聖誕教会の上にはパレスチナの国旗が翻るであろうと語った。


自治政府は8日緊急協議をラマラで行ない「平和的な民衆蜂起」への支持を表明。

 

「イスラエルの犯罪」を非難するとともに、国連人権理事会から調査委員会を派遣し「イスラエルの犯罪と無実の市民の意図的な殺害およびイスラエルの国際法違反」について調査するよう求めた。


刃物から銃へ








ガザを実効支配するハマスだが、西岸地区にもハマスにつながる小さな武装集団(細胞)が散らばっている。

 

ファタハの系列にもアッバスが掌握し切れていない武装組織タンジムがあり、民兵たちがいる。

 

今後、刃物から銃に重点が映るのか、さらには自爆テロが始まるのか、(2)へ続く。

 


 

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