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第三次インティファーダは秒読みか? [パレスチナ]

窒息状態、超法規的殺害およびヘイトスピーチについて

 

10月16日金曜日、ハマス (「イスラム抵抗運動」)が「怒りの日」を呼びかけた。

パレスチナのインティファーダ「蜂起」は秒読みなのか?


ここ数週間のパレスチナ人による様々の殺傷事件は、自然発生的なものであり、個人の行動、

欧米メディアの言う「一匹狼テロ/一匹狼的襲撃」であり、背後に組織が控えていない。

だから過去のインティファーダのような事態とは違う、と言われて来た。

規模的にも1987年、2000年の時の死者が数千人に対し、これまでのところ数十人。


ただ今回は低年齢化が見て取れる。13歳のパレスチナ人の少年がナイフで人を刺しているのだ。

そしてそれに対するイスラエルの対応もその場で殺すという、実に荒っぽいもの。

ツイッターなどSNSの普及した状況も、前回、前々回とは違う。


対応を間違えば、暴力が広まると私は心配している。

市民的ジェノサイドの危険すらあるのではないだろうか。


どう間違える? 

イスラエルが強硬に抑えにかかったり(すでに軍の増援を決めたし、

 容疑者の家をすぐに壊すとか、親の連座制、イスラエル市民の銃の所持の規制を緩める、

 アラブ系イスラエル市民の犯行なら市民権を剥奪、東エルサレムの封鎖、などなど提案されている)

あるいはお互いに激しい言説で、怒りを煽ったりすることだ。

 

ハマスの今日の新たな呼びかけで、組織的動員が始まるのか? 

 

イスラエル は「神殿の丘」に男性イスラム教徒を立ち入り禁止にと言っている(年齢別)。

パレスチナ の若者の群衆が火炎瓶で西岸地区ナブルスの「ヨセフの墓」(*1)に放火したのだ。

極右「イスラエル 我が家」のリーバーマン党首(前外相)はこう発言した。

 

       「パレスチナ自治政府は IS と少しも変らない」

 

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ヨセフの墓の火は消し止められた(写真はハアレツ紙より)

 

       「パレスチナ人が国家を持つことは決してない。

        彼らはイスラエルに支配される」

これはイスラエルのエリ・ベンダーハン副国防相の10月9日の発言だ。

 

       「パレスチナ人は人間じゃない。動物のようだ」

 

と2013年には言ったとされる

http://mondoweiss.net/2015/10/palestinians-israeli-minister


「逮捕したテロリストを殺さない兵士や警察官は裁判にかけるべきだ」


 これはイスラエルのユダヤ教のラビの先日の発言。


Safed rabbi: Terrorists must not be allowed to survive attacks


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先週エルサレムで15歳のイスラエル人を刺したとされる19歳のパレスチナ人は、そのあと

ナイフを捨てたようだった、つまり、人々に脅威を与える状態ではなかったようなのだが、

歩いているところを警察に射殺された。

群衆にけしかけられ

倒れた少年に何発も発砲は続いた。

いきなり発砲じゃなくて、まずは容疑者として逮捕ではないのか?!

ビデオもある。


リベラル派イスラエル人ジャーナリスト・ギドン・レヴィは次のように書いた。


「超法規的殺害(裁判なき処刑、略式処刑)がイスラエルで横行し始めた。(…)
 群衆の歓呼に答え、メディアに煽られ、当局に促され。

(…)

 イスラエルにはこれまでも野蛮な時代はあった。しかしこれほどのものはなかった。
 刃物で人を刺す者、刃物で人を脅す者、ねじ回し、野菜の皮剥ぎで脅してもそうだ、皆、処刑される。

 たとえその凶器を投げ捨てたあとでも。

 そしてその処刑を遂げた者は国の英雄となる。

(…)

 この1週間で14人のパレスチナ人がそのようにして殺された」


(ハアレツ紙10月11日))(*2)


Israel's Lawless Death Penalty Without Trial Buoyed by Cheers of the Masses

憎言(ヘイトスピーチ)は通常
社会の底辺や、枠から外れたところで発せられるものだが
それが高所から発せられ始めると
その憎悪は社会に染み渡り、法の支配をゆがめ、
ひいては、市民的ジェノサイドにも至る。

そして社会の主流から聞こえ始めると、いよいよ戦争だ。

 

去年2014年夏のイスラエル軍によるガザ地区軍事侵攻のときも

高所からのヘイトスピーチが相次いだ。

Deputy Speaker of Israeli Knesset Calls for Expulsion and Jewish Reoccupation of Gaza

 

当時国会副議長だったモシェ・フェイグリンは、

ガザ地区からのパレスチナ人の立ち退きと同地区の再占領を主張(*4)、

ガザ地区の電気と水を絶てと言い、確かにそのとおりになった。

国際人道法に違反することが「道徳的なこと」として、社会の本流から公然と声高に叫ばれるのだ。

 

ジオラ・エイランド(退役准将で元NSCメンバー)は、ガザ地区に市民はいない、

ドイツ人がヒットラーを選んだようにガザの住民はハマスを選んだのだから、と

事実上、ジェノサイドを提唱。

 

Ayelet Shaked.jpeg アイエレット・シャケード (Getty Images)

 

アイエレット・シャケード議員(連立与党の「ユダヤの家」)の皆殺し推奨はもっとあけすけだった。


   「我々の敵はハマスではありません。ガザの住民全体が我々の敵なのです」。 


全員殺せということですか? 女も殺すのですか? と聞かれこの女性議員は答えた。

 

   「そうです。女もです。そうしないと、小さなヘビたちが生まれてきます」(*5)

 

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ホロコーストの生き残りでノーベル平和賞を受賞したユダヤ人作家エリ・ヴィーゼル(米国在住)はこう言った。

 

「ユダヤ人は子供の犠牲(いけにえ)は3500年前にやめたが、ハマスはまだやっている」

 

ハマスが子供を人間の盾として使っているというのだ(*5)。

 

「これはユダヤ対アラブ、イスラエル対パレスチナの戦いではない。


 命を大切にする者と死を讃える者の戦い、文明と野蛮の戦いである」(エリ・ヴィーゼル)(*6)


高所でヘイトスピーチが飛び交うときは、もう戦争である。


なぜ13歳の子供が人を刺し始めたのか。

私はガザ地区の弁護士でパレスチナ人権センターの所長

ラジ・スラーニ(*7)から去年何度も聞かされた言葉を思いだす。


「窒息状態」。


それは物理的な閉塞状況でもあるし、

イスラエルの占領下、人としての権利や尊厳を否定され、生活を圧迫され続けて

その閉塞感・圧迫感が限界に達したということでもあると思う。

 

限界に至らしめた要因のひとつは、東エルサレムを巡る動きではないだろうか。

イスラエル右派の、ここは全部俺たちのもの、お前達はみんな出て行け、

というイデオロギー、そのあらわれである入植地建設続行やエルサレムのユダヤ化、

それが先鋭化し、旧市街のイスラム教の聖地まで自分たちのものに、

という一部右派の求めがここ数年強まっている感がある。

それはユダヤ教の主流の人々も、そこまで行ったら

ユダヤ教そのものが変質する、として反対している考え方だし、

ネタニヤフ首相も繰り返し「神殿の丘は現状維持」と強調しているのだが、

9月半ばのユダヤの新年でユダヤ人右翼の動きが活発化してしまう。

旧市街での罵り合いや小競り合いが9月は頻繁に起きていた。


これから第3インティファーダが始まるかどうかは、

ヘイトスピーチが激化するかどうかを見ていれば分かるかもしれない。

 


 

*1 歴史的にユダヤ教徒とキリスト教徒とイスラム教徒で紛争の種となってきた場所。

   ヨセフの骨は文字通り bones of contention (英語で「争いのもと」の意)である。

   ヨシュア記24章32節に、ヨセフの骨はエジプトから持ち帰ってシケムに葬られたとある。

   そこは今のナブルスで、西岸地区のパレスチナ自治政府の管轄する地域。

 

*2 ギドン・レヴィによると、刺された15歳のイスラエル人の子供は幸い比較的軽い傷ですんだ。

   しかし警察に射殺されたパレスチナ人少年の遺体はイスラエル当局が抑えている。

   裁判所から通知があり、やがて遺族に引き渡されることが分かったが、

   規則により、直ちに葬儀を行なわなくてはならない。参列者は50人まで。

   遺族は5,250ドルの葬儀費用も払わなくてはならない。

 

*3 フェイグリンの考えは、ガザはパレスチナ人が住む前の今から数千年前の昔にはユダヤ人の住んでいた土地であり、

   すべてイスラエルのものであり、テロなどに手を染めていない人は立ち退いてもらう、手当を出す、というもの。

 

*4 北米先住民を殺しまくったアメリカの騎兵隊の将軍の言葉を思い出す人もいる。  

   子供はどうします? と聞かれ将軍はこう答えた。  

  「シラミは卵から生まれる。卵もつぶせ」

   "U.S. Complicity Brought Up to Date" in Israel's War against Gaza

 

*5 Jews rejected child sacrifice 3,500 years ago.

   EUはハマスが人間の盾を使ったと非難。しかし、BBCの現地からの報道もアムネスティ・インターナショナルも

   その事実は確認できないとする。

   それ以前も、子供を人間の盾として使っているのはむしろイスラエルのほうである。

   ユニセフ報告書(2013)がそれを指摘している。

   Palestinian children tortured, used as shields by Israel: U.N.

 

*6 ヴィーゼルの言う「子供のいけにえ」はイスラエル政府も引用し、ハマスを非難した。

   しかし住民は他に安全な場所がないからと、自分の意志で学校に集まっていたという。

   国連関係者もそのことを30回以上イスラエル側に伝えていた(BBCで証言)。

   そこへミサイルをぶちこむイスラエル。

  「文明と野蛮の戦い」というエリ・ヴィーゼルだが

   ガザ地区に180万人を閉じ込め

   発電所や水道を破壊し、住宅、学校、礼拝所、病院、救急車を空爆、

   ガザの2,200人(うち市民7割)を殺したのはイスラエル軍だ。

  「文明と野蛮」?!「命を大切にするものたち」?!

   イスラエル側の死者は市民6人、兵士66人。**

 

**数に関してはイスラエルの保安部元長官がニューヨーク・タイムズに寄稿している:

 

「倫理と道徳を死者の数で計ることはない。パレスチナ人の死者がイスラエル人の死者を上回るからといって、彼らの戦いが正しいということはない。第二次大戦ではアメリカ人よりドイツ人の死者が多かった。だからヒットラーは正しくアメリカは間違っていたと言うのか」



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