NY 核攻撃のシミュレーション：のら猫寛兵衛（旧）：SSブログ

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NY 核攻撃のシミュレーション　[核兵器] [編集]

アイラ・ヘルファンド（IPPNW 核戦争防止国際医師会議）

会議初日（１２月６日）開会と基調演説（サーロー節子）に続く「導入部」セッションで発表。

冒頭、印パの限定的核戦争のシナリオ（政府会議初日のマイケル・ミルズと同じ）に触れたあと

米露の核戦争でニューヨークが核攻撃を受けた想定で話を続けた。

（印パの限定核戦争に関しては、ミルズの述べなかった内容も一部あった。たとえば１００発の核兵器の応酬で、南アジア（インド亜大陸）では１週間のうちに２千万人が死亡するといったこと。数日のうちに世界の平均気温が1.3度低下すること（過去１３０年で平均気温がどれだけ低下したかと比べれば、それがいかに大きいかが分かる）に触れたあと、ミルズと同じく世界の食糧生産の低下に言及。そして、ニューヨークが核攻撃を受けるというシミュレーションだ。

アイラ・ヘルファンド（IPPNW核戦争防止国際医師会議）：

「…世界はこれほどの食糧供給の低下に対応できるような状態にはありません。今、世界の食糧の備蓄は７０日分しかないのです。世界には、栄養不足ぎりぎりの水準の人が現在およそ８億２５００万人います。体力を維持するのがやっと、そして少しだけ仕事ができる、という水準です。さらに食糧の輸入に依存する度合いが極めて高い国々に住む人が３億人。そして中国には今１０億人あまりが適切な栄養のレベルにあり、食糧は大半が国内の生産ですが、その国が、今見て来たように、十分な食糧生産が出来なくなるのです。

ですから私たちの結論はこうです。この非常に限定的な核兵器の使用、すなわちインドとパキスタンで世界の核兵器の持つ威力の0.03パーセントを使った場合でも地球的な飢餓が発生し、２０億人に影響が及ぶ。

ニューヨークへ大規模な核攻撃

では核兵器が大規模に使われた場合のことを少し考えてみましょう。まず１つの都市に対する大規模攻撃です。広島は１５キロトンの原爆一発でした。ニューヨークのような都市への大規模攻撃となると広島に投下されたものの３０倍の威力を持つような爆弾が１０発から１５発、１８発と使われるでしょう。

説明しにくいのでモデルを使います。２０メガトンの爆弾１発。つまりTNT火薬の２０００万トン分の威力です。威力の小さい核弾頭１０発あるいは１５発による攻撃よりは大きめですが、破壊はより少ないと言えます。１０発なら地域一帯に広がりますからより効果的な破壊となるのです。ですから大規模攻撃の破壊は過小評価することになりますが、私たちの目的に適うモデルです。

起爆から千分の１秒内に大きな火の玉が出来、全方向に３kmを覆います。直径６kmです。その全域で温度は華氏２０００万度に上昇します。すべてが蒸発。建物。木。人。地表の土。すべてが消えます。爆心地から半径６キロ内は風速毎時1000キロを超える爆風です。爆風の圧力は１平方インチあたり２５ポンドです。これほどの機械的な力なら、人間の作ったものはすべて破壊されます。

半径９キロ内は熱で自動車が熔けます。半径１５キロ以内でも爆風は時速３００キロを超えています。爆風の圧力は１平方インチあたり１０ポンドを超えています。これだけの力だとれんが造りの建物や木造建築が壊れます。現代的な鉄筋コンクリートの建物も、壁、天井、床がバラバラになります。

半径２５キロ内では、燃えるものはすべて燃えてしまいます。木、紙、布、プラスチック、ガソリン、油、すべて引火します。数十万件の火災が発生。それらが合体して、それからの３０分の間に巨大な火の嵐と化します。

半径５０キロ内は全域で温度が華氏１４００度に達し、酸素はすべて失われ、生きているものはすべて死滅します。ニューヨークは人口１２００万人から１５００万人です。もしこれが米露の大規模な核戦争とすると、アメリカとロシアの大きな都市はすべて同じようなことになります。もしNATOが戦争に巻き込まれればここヨーロッパの大都市もそうです。

２００２年に私たちが発表した研究によりますと、ロシア軍の厳戒態勢にある核弾頭１５００発のうちアメリカの標的に到達するのは３００発だけです。最初の３０分で７５００万人から１億人の人が死亡。アメリカの経済インフラが壊滅。そしてアメリカでもロシアでも、残る国民は恐らくそのあとの数ヶ月のうちに亡くなってしまうのです。飢餓ゆえに、あるいは最初の冬の寒さで、疫病で、放射能で。

核の冬

このような直接的な影響がいかに想像を絶するものであれ、それで全てではありません。気候の変動、核の冬こそ、考えなくてはならないことなのです。南アジアの限定的な核戦争で５００万トンのススが大気に放出されます。アメリカとロシアで戦争が始まり、新START（戦略核兵器削減条約）を完全に実施するなかで許される核兵器のみを使ったとしても、１億５０００万トンのゴミが大気に放出されます。それによって惹き起こされる気温の低下は（先に述べた）摂氏1.3度ではなく、８度です。地球の平均気温がそれだけ下がるのです。北米とユーラシア大陸全体では摂氏２５度から３０度の低下です。そしてその影響が１０年続きます。

ここまで寒い状況はこの地球では過去１万８０００年、経験したことがありません。先の氷河期のいちばん寒かったころ以来のことです。北半球では３年間、霜の降らない日は１日もありません。毎日必ず１度は気温が氷点下になります。ですから、生態系が崩壊します。食糧の生産が止まります。人類の大多数が餓死します。種として人類が絶滅する可能性すらあると思います。

エリック・シュロッサーもあとで話をします。彼の話でも、これが私の勝手にでっち上げた悪夢のシナリオでないことが分かります。これは現実に起こりうることなのです。ウクライナの紛争から意図的に核兵器を使う事態にならないにしても、あるいは、事故で核兵器が使われることがこれまでなかったとしても、アメリカとロシアが核戦争を始める数分前ということは1979年以来少なくとも５回あったことを私たちは知っています。いずれも相手が核攻撃を仕掛けてきたと誤認してのことです。

直面する危険の規模

いろんな数字を並べました。飲み込むのが、消化するのが難しいかと思います。そこでこれから少し実演をしてみたいと思います。我々が直面している危険がいかに大きなものであるかを分かってもらうためにアメリカでよくやっていることです。第２次世界大戦では、合計３メガトンの爆薬が起爆しました。そのすべてを合計しての数字です。爆弾、砲弾、すべてです。ドレスデン、ハンブルク、東京の大空襲で使われた爆弾も含みます。広島と長崎の原爆もです。それらすべてで３メガトン。こんな音がします：チロリン。一方、アメリカとロシアが新START（戦略核兵器削減条約）を完全に実行した上で2017年に保有を許される核兵器は、およそ１０００メガトン相当ということになるでしょう。第三次世界大戦になったら使われるかもしれない核兵器。その威力を表す音はこんな感じです：ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ～～～～～～～～～～～～～～～ーーーーーーーー…………。これが私たちの直面する危険の大きさです。

なぜ私たちは核兵器のことを気に留めなくてはならないか？それは、私が今朝話をしたことは、必ずそうなる、ということではなく、私たちが行動を起こさなければそうなる、ということだからです。こうなるのが私たちの運命というわけではありません。核の事故は不可抗力ではありません。自然の力によるものでもありません。核兵器は人間が作った装置です。私たちにはこれらの兵器を解体する能力があるのです。

私たちの責任

若い人たちに少し言わせて下さい。こんな話をして、皆さんには謝らなくてはなりません。辛い話だったと思います。そしてこの問題、皆さんが作ったものではない。皆さんにはまったく責任がありません。しかし、ある重要な意味において、皆さんにも責任があるのです。というのも、もし皆さんが私のような年配の人たちと手をたずさえてこの問題の解決に努めなかったら、この問題はなくならないからです。そしてこれらの兵器がなくならなければ、必ず使われます。そうなると、私が話したこと、そして先に節子さんが見事に描き出されたようなことが、起きてしまうのです。

ですから、私たちには大変な責任があります。しかし、それは大きな贈り物ととらえることもできます。私たちは皆、人生において何かいいことをしたいと思っています。そして今私たちは歴史を変えることができる立場にあるのです。今、私たちは核兵器を禁止し、核兵器を廃絶できるのです。

そうすればいつの日か、私たちはお互い見つめあって、自信をもって言えるはずです。私たちは世界を救った、と。それで皆さんもいい人生になるのです。

（拍手）

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