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土井敏邦氏の記録映画について [中東]

ラジ・スラーニ 東大講演2日目 2014 10 12

土井敏邦監督の記録映画(『ガザに生きる』『ガザ攻撃 2014 年夏』)について

土井の映画には言葉を奪われます。
現実そのものです。そして現実に対する深い洞察があります。
たんに現象面を追うだけでなく、原因にまで掘り下げています。
非常に真っ正直な客観的な記録です。
パレスチナとイスラエルの紛争に関し、事実を伝えている。
きのう観た作品と相補っています。そしていろいろと違う視点を伝えています。
物事の理由、原因まで掘り下げている。

占領地 「罪の収穫」のいま

最初のインティファーダ以来これまで起きてきたことをいま振り返ると、一つの単純な結論に至ります。状況が悪化の一途をたどってきたということ。暴力が激化しているということ。 

最初は投石対弾丸でしたけど、最後はロケット弾対アパッチ型ヘリコプター・F16型ジェット戦闘機・無人機・戦車・軍艦・大砲の戦いとなりました。最初は数年で数千人の死者だったものが、今では、数十日で数千人の死者となっています。

今はまたガザを封鎖する占領政策が行われています。今はっきり言えることは、今がこれからどうなるか先の読めない時だということです。先行き不透明。そして平和はこれまででいちばん遠いのです。

さらに描いてほしいもの

二点、土井の映画に欠けていたものを言っておきます。それも是非盛り込んでほしいと私は思っています。

一つはラビン(イスラエル首相)の暗殺です。それに少し焦点を当ててほしい。ラビンの暗殺は他に類を見ない、特別の出来事でした。あの日以来、オスロ合意が危篤状態になったのははっきりしていると思うのです。そして暗殺はパレスチナ人によるものではありませんでした。ラビンを殺したのはイスラエル人でした。

もう一つはアラファト(PLOパレスチナ解放機構議長)の暗殺です。彼は平和のパートナーとなりましたが、最後は「テロリスト」として葬り去られました。現代史におけるパレスチナの最高指導者でありましたが、「和平合意」を結んだことでラビンと共にいわゆるノーベル平和賞を受賞し、平和のパートナーとなりながら、最後は「敵」、「テロリスト」とされました。イスラエル軍に包囲され、屈辱的な姿を何日、何週間、何ヶ月と世界に晒し、最後は放射性物質という毒で殺されました。最後は彼を亡き者にする、排除するというイスラエルの結論だったわけです。それがイスラエルなりの平和の見通しです。それがパレスチナ人という他者との関わりの、イスラエルの一つのあり方だったのです。

歴史から学ぶこと 国際法や人権の大切さ

歴史の重要性とは何でしょう? 真っ正直な記録映画の重要性は何でしょう? それは、過去を理解する、過去から学ぶということです。私たちの現在は、過去と切り離されてはいないのです。今の政治的な瞬間は、過去の継続、その延長上にあります。そして未来とは、現在と過去が一緒になって続いて行く、その延長上にあるものです。

もし私たちが過去から、そして現在から、正しい教訓を学ばないならば、未来は確実に重大な過ちをたくさん含むことになるでしょうし、戦争犯罪といった過ちを繰り返すことになります。ですから私たちは歴史を学ぶのです。

ここで二つのことを強調しておきたいと思います。まずは、今の状況に関して、今の、非常に醜悪で血なまぐさい状況に関してです。そこには他の波も押し寄せてきて、今すぐにもあるいはやがて、大きく爆発する可能性を十分秘めています。これまでに起きたことがそのうち繰り返される可能性が十分あるのです。しかし、これまで以上に血なまぐさいことになるでしょう。

二つ目は、さらにAとBがあるのですが、Aというのはイスラエルがいつも「じゃましないでくれ、私たちだけにさせてくれ」という点です。イスラエル人とパレスチナ人だけで話をさせてくれと。他の人たちが介入しなかったらなんとか自分たちだけで平和が可能だと言うのです。国際社会が介入をせず、邪魔をしなければ、自分たちだけで平和にたどりつけると。しかしそれでは、殺戮者あるいは猛獣にヤギを預けるようなものです。ですから第一の教訓は、殺戮者に私たちのことを任せたら、私たちは殺されるだけだということです。

Bは国際法、国際人道法、人権といったものが、パレスチナ人の発明物ではないということです。それは人類の最も貴い経験の中から生み出されてきたものです。特に第二次世界大戦を経てからのことです。第二次世界大戦では、嵐の真っ只中にあったのは、市民でした。市民8500万人が死にました。その中にはユダヤ人のホロコーストも含まれます。ですからそういった経験から生み出されたのがジュネーブ条約や国際人道法であり、非常に重要なのです。

私たちは再びここでそのことを強調します。市民がこの紛争の犠牲者であってはならないのです。ですからこの20年は大変な間違いでした。イスラエルと欧米は国際法と国際人道法と人権を避けてきました。この紛争のどこにもそれが出て来ないようにしたのです。ですから非常に苦々しい結末となっているのです。規範というものがまったく欠如しています。あるのは、ジャングルの掟です。それが、今私たちが嫌というほど味わわされているものです。

ガザ地区の封鎖と社会的、経済的な窒息状態。6年で3回の戦争。今回はこれまでで最も血なまぐさく、最も残酷でした。西岸地区では新種のアパルトヘイト(人種隔離政策)、エルサレムでも社会的、経済的窒息です。ですから前途に政治的解決の展望が一切開けません。パレスチナとイスラエルの間に。誰も、国際法、国際人道法、人権の話をしない。私たちがICC(国際刑事裁判所)に話を持って行きたいと言っても、「だめだ」と一喝されるのです。お前たちにそんな権利はない!というのです!自分たちだけで解決しなくてはならないというのです。ですから、不可欠であるはずの法の支配が非常に欠けているのがこの紛争なのです。

真っ正直な一級品

あと二つ言わせて下さい。土井には感謝しなくてはなりません。これは、本当にプロの手になる偉大な作品です。一級の仕事をしてくれました知識人インテリの仕事ではありません。ま、ある意味、知的な作品ではありますが、非常に責任感の強い、非常に勇気ある仕事です。たいへん危険なことだったのです。土井がどんなに大きな危険を冒していたかは、私が身をもって知っていることです。遠く日本を離れ、妻や家族を離れ、この類いまれな質の高い仕事をしてくれたのです。これまでの長年の付き合い。それは非常に辛い日々、困難な道のりでした。それが具体的に何年か、お互い歳がばれるのであまり言えませんが。タフで頑固な仕事ぶり。そんな彼に私たちは負う所が非常に多くあります。その結実がこれらの真っ正直で客観的でプロ一級品の記録映画でした。土井、ありがとう。



ラジ・スラーニ 各会場の講演と質疑:

 

1011日 東京大学

 講演「沈黙という名の共犯関係」

 質疑応答

1012日 東京大学

 土井敏邦監督の記録映画について

 臼杵陽教授との対談

1013日 京都大学

 講演「かくも重き罪 裁かれぬ理不尽」

 質疑応答

 京大講演 IWJ 動画 「ガザに生きる尊厳と平等を求めて」

1015日 広島大学

 講演  「戦争犯罪の責任を問う」

 質疑応答

1017日 東京四谷講演  弁護士集会

 講演「ガザの封鎖を解いて下さい」

 質疑応答

 

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